イールドギャップは不動産投資をする方には欠かせない指標のひとつです。
しかし計算方法や活用方法が複数あって、どう利用したらいいのか難しいところです。
そこでイールドギャップの
・メリット
・計算方法
・使用上の注意点
について初心者にも分かりやすい言葉で解説しています。
・国債に投資するよりリターンが大きく、
・株式投資よりリスクの少ない
賃貸収入をあてにした不動産投資に興味がある方は読んで損の無い内容となっていますよ。
不動産投資における『イールドギャップ』とは
イールドギャップとは対象としている不動産物件がどの程度儲かるのか判断するのに利用する指標のひとつです。
物件の情報をアレコレ見ても収益性が高いのかどうかは素人には分かりません。
しかしイールドギャップを計算して、収益性が高い物件のイールドギャップと比較するれば、稼げる物件かがスグに判断できるのです。
この他にもイールドギャップには様々なメリットがあります。
次の項目で詳しく見ていきましょう。
イールドギャップを知っておくメリット
イールドギャップは不動産物件を評価する際に役に立ってくれますが、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。
ここではイールドギャップの持つ4つのメリットについて取り上げます。
物件の評価以外にも使いどころがありますよ。
不動産物件の収益性を判断する目安になる
イールドギャップを利用すれば特定の不動産物件がどの程度収益性があるのか簡単に判断できます。
簡易的なものなら「不動産利回り」と「不動産ローン金利」の差を計算するだけですから、暗算でも可能です。
電卓やプログラムの必要なく、物件の収益性を判断できるので大変便利です。
また中古物件や新築物件など、物件の特徴ごとに適切なイールドギャップの値を調べられる点も見逃せません。
初心者の方はイールドギャップを計算できても、その値が良いのか悪いのか分かりません。
そんなとき、先輩投資家の知識を借りて、気になる物件の収益性を簡単に判断できるのは助かるでしょう。
イールドギャップが低い物件では、どこに問題があるか見当がつくことも大きい利点です。
少なくとも利回りか、金利(返済額)のどちらに問題があるのかが分かります。
問題が特定できれば、現在の経済状況でそれが解決されるかを考察することも可能でしょう。
自分の投資スタイルに合った物件か判断できる
イールドギャップは賃貸収入を中心とした中長期の不動産投資で利用されるのが一般的です。
イールドギャップが10%を超える物件を入手できれば、投資額を短期で回収できますから、大きな利益を得られます。
一方、キャピタルゲインで利益を上げようと考えている方たちにもイールドギャップは利用されています。
キャピタルゲイン狙いならイールドギャップは2~3%程度必要です。
このように投資スタイルごとに物件の良し悪しを判断するのに活用できます。
自分の投資スタイルに合う物件かどうかをイールドギャップを使って判断するには、まず上手く運営できている物件のイールドギャップを計算してください。
そのイールドギャップの値が、あなたにスタイルに合った物件の目安となります。
投資をするのに好機かどうか判断できる
イールドギャップの推移を観察することで、市場の状態がどう変化しているのかを判断することができます。
例えばイールドギャップの値が何か月も上がり続けているようなら、家賃の高騰、ローン金利の低下などが判別できます。
いずれにしても不動産投資をするには好ましい条件でしょう。
特に金利が低下しているなら、今後の不動産業界は盛り上がることが予測できます。
家賃相場が上がっている場合は、そのエリアに流入してくる人が増えている可能性があります。
人が集まるところは開発されますから、所有する物件の価値が上がることも期待できます。
場合によってはキャピタルゲインで大きな利益を出せるでしょう。
このようにイールドギャップを使って投資のタイミングを測ることができます。
政策方針の先読みができる
景気や投資熱が加熱すると、銀行から融資を受けて不動産投資を行う方が増えます。そのままですと不動産バブルが発生して経済に悪影響を及ぼす可能性が高くなってきます。
そのため政府は、投資熱が異常加熱しないように不動産投資に関連した融資を控えるよう銀行に指導することがあります。
この指導が進むと融資を受ける際の金利が上がるので、イールドギャップの平均値が低下していきます。
このようにイールドギャップの平均値を観測することで政策方針の変化を読み取ることができます。
イールドギャップの計算方法
イールドギャップを計算するためには、
「不動産の利回り ー 不動産ローンの金利」
で計算をします。
不動産の利回りとは、不動産を1年間運用することで得られる利益の目安と考えてください。
不動産を取得するのに費やした金額が1年間で何パーセント戻ってくるかの指標とも言えます。
例えば3000万円で取得した不動産物件の年間家賃収入が300万円だった場合、不動産の利回りは次の式で表されます。
300万円 ÷ 3000万円 × 100 = 10%(不動産の利回り)
もし家賃相場が30%ほど低下すれば、(200万 ÷ 3000万 = 約6.7%)ほどまで不動産利回りは低下します。
このように不動産利回りは投資した不動産の家賃収入に大きく依存する値となります。
不動産利回りを大きくするには家賃の高騰が期待できる物件が望ましいことが分かりますね。
一方、不動産ローン金利は文字通り、不動産を取得する際に利用したローンの金利になります。
不動産の利回りから、このローン金利を差し引いた値がイールドギャップですから、イールドギャップを高くするには貸出金利の低い融資を探すことが重要です。
利用した不動産ローンの金利が2.5%だった場合、そのイールドギャップは次のようになります。
6.7% - 2.5% = 4.2%
この式の4.2%がイールドギャップです。
思いのほか簡単に計算できて呆気に取られた方もいるのではないでしょうか?
実は、このイールドギャップにはより精度の高いものがあります。
つまりイールドギャップには「大雑把な目安」と「正確さを重視したもの」の2つのタイプがあり、状況に応じて使い分ける必要があるのです。
2つのイールドギャップの特徴をそれぞれ確認しましょう。
簡略化されたイールドギャップ
前述した計算方法で求めたイールドギャップです。
簡単な不動産利回りと不動産ローンの金利だけで計算できるので手軽なのがメリット。
しかし欠点があります。
不動産投資の実情に合っていないのです。
例えば不動産投資のコスト面について金利だけしか考慮していません。
実際は金利だけでなく返済期間も不動産投資では問題になります。
金利が低くても3,4年で返済することを求められていたのでは年間の返済額は非常に重くなるでしょう。
その点がすっぽりと抜け落ちています。
また、不動産の利回りに関しても税金や物件の管理維持費が含まれていないので実際の運用とはかけ離れたものになっています。
これでは正確に物件の収益性を測りたいケースで頼りになりません。
不動産投資の実情を反映した正確なイールドギャップ
不動産投資の実情をより正確に反映したイールドギャップは、物件の収益性を精査するのに使われます。
単純化されたイールドギャップで問題だった不動産利回りについては「物件の年間維持費用」と「物件購入時の諸費用」が加えられ、より条件が厳しくなっています。
より精度を増した不動産利回りの計算式は次のとおりです。
(年間の家賃収入-年間維持費用)÷(不動産購入価格+物件購入時の諸費用)= 不動産の実質利回り(%)
具体的に計算してみましょう。
年間の家賃収入を300万円、年間維持費用を50万円、不動産購入価格を3000万円、購入時の諸費用を200万円とすると不動産利回りは次のようになります。
(300万円-50万円)÷(3000万円+200万円)= 約8.9%
経費を考慮した分、利回りが低下しましたが、不動産投資をより反映した形になったことが分かります。
同様に不動産ローンの支払い部分も改善します。
これまでは不動産ローンの金利だけを考えていましたが、これでは実際の年間支払額を反映できません。
そこで代わりに年間のローン返済額とローン残金の割合(ローン定数)を用いるようにします。
計算式は次になります。
(利息分を含めた年間返済額)÷ ローンの借入残高 × 100 = ローン定数
具体的に数値を入れて計算してみましょう。
年間返済額を200万円、借入残高を2600万円とします。
200万円÷2600万円×100 = 約7.7%
ローンの金利だけを考えた場合と比べてだいぶ雰囲気が変わってきました。
正確なイールドギャップを知るには、実際に支払っている額をベースにするのは欠かせないでしょう。
それでは最後にイールドギャップを求めたいと思います。
計算式は次になります。
年間の実質利回り - ローン定数 = 正確なイールドギャップ
これまで求めた数値を上式に入れて計算すると、正確なイールドギャップは(8.9% - 7.7% = 1.2%)となります。
簡略化したイールドギャップに比べて計算が複雑になっていますが、物件を購入する際の参考にするには、こちらの正確なものを用いることをおすすめします。
イールドギャップの計算を求める際の注意点
イールドギャップには簡易的なものと、正確なものがあります。
それぞれ活用するタイミングが違いますが、使用に際していくつか注意する点があります。
ここで代表的な注意点を紹介しますので、誤って使用しないようにしっかりと確認してください。
簡易的なイールドギャップは大雑把な目安にしかならない
賃貸収入と物件価格及び不動産ローンの金利しか考慮していない簡易的なイールドギャップは不動産投資の実情を正確に反映していないので、これをもとに最終的な投資判断をするのは危険です。
正確な指標が必要な場合は実質利回りを利用したイールドギャップを活用してください。
簡易的なイールドギャップが活躍できるのは物件の収益性を簡単に確認する場合です。
たとえば、暗算でもできる簡易的なイールドギャップの値が2%を下回るようなら実質的な利回りはまったく期待できないでしょうから選択肢から除外できます。
このように物件を振るいにかけるのに利用すると便利です。
複数の物件を所有する場合は空室の可能性も考慮する
不動産を運用するなら空室になるリスクも考慮して利回りを計算する必要があります。
空室のリスクをイールドギャップの計算式に組み込むには、実質利回りを計算する際に年間賃料収入から空室損失費用を差し引きます。
空室損失費用の計算式は(年間家賃収入×0.05)です。
係数は0.05となっていますが、これはあくまで目安で、物件のある都道府県によって異なります。
ただし、空室による損失を経費に加えるべきかは考えが人によって異なります。
より厳しく物件を評価したい場合には加えるといいでしょう。
計算式には含まれない融資期間にも注意する
物件を購入する際に利用した不動産ローンによっては運用期間を長く設定すると金利が上がるものがあります。
不動産投資を始めた頃は年間の返済額が少なく、年を追うごとに金利が上がり利息が重くなるようなら、不動産の評価を改める必要があるでしょう。
また、長期の運用を前提とした不動産投資の場合はローン金利の変動に注意しなくてはなりません。
先進国の経済状況、政治状況によっては金利が大きく変動する可能性があります。
世界情勢の変化を事前に加味してイールドギャップを計算するのは難しいことですが、金利の変動を考慮して仮のイールドギャップをいくつも計算し検討することは十分可能です。
なるべく多くの状況を想定して収益性を精査するのが重要になるでしょう。
そのためには日頃から世界情勢に関するニュースに触れておくのが大切です。
理想的なイールドギャップ
イールドギャップは不動産利回りを1年間に返済されるローンの割合で割ったものですから、利回りが大きくなればイールドギャップの値も増大します。
つまり、イールドギャップは大きいほど投資家にとって好ましいわけです。
滅多に無いことですが、イールドギャップが10%以上の物件は収益性が非常に高いと言っていいでしょう。
ローン金利を極端に上げられなければ損失を出すことはまずありません。
イールドギャップを考慮する方はキャピタルゲインを狙っていないでしょうから不況にも強いですし、イールドギャップが高い物件を所有していれば景気の後退局面でも安心していられます。
10%に届かなくても、6%あれば優良物件と評価して問題ありません。
20年かからずに投資額を回収できるでしょう。
賃貸で運用しながらタイミングを見てキャピタルゲインで稼ぐことを考えている場合は、2%以上のイールドギャップが望ましいです。
ギリギリ運用益が出るレベルでしのぎながらチャンスを待てます。
2%以下の場合は続けると損失を生む可能性が高いですから投資を控えるべきです。
まとめ
イールドギャップは不動産物件の収益性を判断するのに実に役に立つ指標でした。
簡易版のイールドギャップで大雑把に判断し、正確なもので詳細な収益性分析することができます。
より厳密な分析がしたい場合は自分で計算式に各種費用を加えることで、自分用にカスタマイズできる柔軟性もあります。
不動産市場を投資の観点から評価するのに広く利用することも可能ですから、儲かる物件を探すだけでなく経済情勢を先読みするのにも是非活用してください。