不動産投資において収益物件を安全に運営していくためには、賃貸管理のタイプをしっかりと押さえておく必要があります。
代表的な賃貸管理のタイプには
(1)自主管理
(2)集金代行管理
(3)サブリース管理(借上げ保証・家賃保証など)
があります。
今回は(3)のサブリースという不動産会社が物件を借り上げて運営を行うタイプについて詳細に解説していきます。
家賃保証(サブリース)とは?
不動産投資を始める際に気を付けなくてはならないのは、賃料の未払いと空室リスクの問題だと思います。
そんなリスクを軽減してくれるためのサービスとして、利用されているのがサブリースの家賃保証です。
このサブリース管理は賃貸管理会社によって細かな決まりや条件が異なることが多く、サービス内容などでオリジナリティを出せる部分ともいえます。
ただし、定義がないということは、逆に管理会社の制度をしっかり見ないと危険な契約だということです。
昨今ニュースにも取り上げられたように、サブリース契約を破棄した会社が社会問題になるケースを考えると、本当に安心したサブリース契約を見極める知識も必要になってきます。
では、ここからサブリース管理の3つの種類について解説をしていくとともに、それらのメリットとデメリットもご紹介してみたいと思います。
不動産投資の家賃保証の種類
不動産投資をする際に利用できる家賃保証サービスには、「家賃債務保証」、「サブリース」、「空室保証」の3種類があります。
不動産投資における家賃保証のサービスには、それぞれに異なった特徴やメリットとデメリットがあります。
サービスを利用する際は費用もかかりますので、自分に必要か、どのタイプが適しているのかも検討して利用したいものです。
では、ここから家賃保証サービスの主な3種類についてみていきましょう。
家賃債務保証とは?
まず一つ目の家賃債務保証とは、入居者が賃貸物件に入る際、家賃保証会社に手数料を払うことで連帯保証人になってもらうことができるサービスです。
このサービスを利用すると、入居者が家賃を滞納してしまった時に、家賃保証会社が家賃を立て替えてくれます。
入居者が家賃を滞納し、家賃保証会社が賃料を立て替えた場合には、家賃保証会社が直接入居者に請求することになります。
さらに、家賃滞納が続いてしまった入居者に明け渡し訴訟をしなくてはならなくなった場合でも、訴訟費用は家賃保証会社が負担はしてくれるというものです。
そして、明け渡しの際の、入居者の荷物の処分やクリーニングなどの原状回復費用も、家賃保証会社が負担してくれるのです。
もちろん入居者の滞納した家賃を際限なく支払ってくれるというわけではありません。
家賃保証会社ごとの規定によった、一定範囲内で立て替えるということになります。
賃貸契約をする際に、従来だと連帯保証人は入居希望者の親や兄弟、もしくは親戚に頼むのが一般的でした。
ですが、最近では家族関係が希薄になってきており、さらには親の高齢化など、連帯保証人を頼みたくない、また頼める人がいないなどの事情が増えてきました。
また高齢者や子育て世帯などに、より賃貸契約をしやすくするよう国もすすめていますし、配慮を促す社会的風潮があります。
そういったことから家賃債務保証の利用は増えていく傾向にあります。
メリット
賃貸経営をするオーナーにとっては、安定した家賃賃収入は一番大切なことです。
その家賃滞納のリスクを軽減できるという点でのメリットが、やはり一番大きいですね。
さらに、入居者が家賃滞納を続けて、明渡訴訟になった場合の費用を負担してくれるということも、かなり嬉しいメリットではないでしょうか。
加えて原状回復のための修繕費用の保証もありますから、オーナーにとってはかなりの負担が軽減できます。
実際に入居審査で問題がない入居者であっても、後々常識に欠けて滞納したり、会社を辞めて収入がなくなり滞納してしまう、ということは珍しくありません。
そんな際に家賃債務保証サービスを利用しておけば、最悪のリスクを心的にも費用的にも軽減できるというのは、心強いといえますね。
また、入居者にとっても自分で連帯保証人を誰かにお願いする必要がないので、賃貸契約をしやすくなるといえます。
デメリット
家賃債務保証サービスの最大のデメリットはどんな点でしょうか。
それは、家賃債務保証会社が倒産した場合です。
貸主や借主は賃貸契約の際に手数料(保証料)を支払っています。
物件や家賃保証会社によってその額は異なりますが、家賃の半月分という会社もあれば、1か月分、もしくは家賃の30〜70%、月に1〜3万円程度の固定額などと、さまざまです。
倒産の場合は、その手数料が戻ってきません。
また、貸主も入居者もその手数料(保険料)の支払い自体がデメリットになります。
さらに入居者にとっては、もし事情があって家賃を滞納してしまった場合にも、債務保証会社からの厳しい取立てを受けたり、強引な明渡請求を受けたりするデメリットがあります。
サブリースとは?
不動産物件を検索していると、家賃サブリース契約という物件をよく見ます。
これは不動産会社が、オーナーの所有する賃貸物件を一括して借り上げて運営をするというサービスです。
物件のオーナーが、不動産会社とサブリース契約を結んだ物件は、入居希望者は不動産会社と賃貸借契約を結ぶことになります。
その場合には、入居者が毎月支払う家賃はまず不動産会社が受け取ります。
物件の所有者は、不動産会社から締結した条件のサブリース料を毎月受け取るという仕組みになっています。
メリット
サブリースのメリットは、入居者が決まらず空室になった時も、入居者が滞納した時もサブリース契約通りの賃料が不動産会社から受け取ることができる点です。
保証の相場は、家賃の7~9割程度です。
また家賃の集金や手続き、入居者のクレームなどの管理をサブリース会社に任せられるメリットがありますから、オーナーにとっては手間が省けます。
サブリース契約には物件の管理業務も含まれるためです。
またサブリース契約では確定申告の手間も省けるという大きなメリットもあります。
デメリット
サブリース契約のデメリットは、まず家賃収入が低くなってしまうことです。
不動産会社に払うサブリース料は、満室時の家賃収入のだいたい15~20%となっており、その金額が一定してサブリース料として差し引かれます。
もし空室がない場合でも家賃の手取りが減ってしまいます。
サブリース契約をした場合の家賃収入は、本来の家賃の7~9割が相場です。
また、入居者を選べないというデメリットもあります。
不動産会社に借り上げしてもらっているので、入居者を選ぶのは、オーナーではなく、貸主であるサブリース会社です。
また、家賃を決められないということもあります。
空き室を作らないことを重視しているため、入居者が入るまで家賃を下げ続けるという方法をとることもあります。この点は特に気をつける必要があります。
大半のサブリース契約において家賃を決める権利はサブリース会社とされていますので、確認しておきましょう。
さらには、すぐに解約できないという点もデメリットでしょう。空室の心配がない場合や、勝手な家賃が下落値引きを回避しようと、途中でサブリース契約を解約したくなることもありえます。
しかし、サブリース契約はオーナーが申し出ても解約できません。
解約できるタイミングが決められているので、途中解約は違約金が生じます。
また家賃を保証する立場のサブリース会社自体が倒産してしまうリスクも無視できません。
空室保証とは?
空室保証とは、毎月一定の保証料(月額掛金)を支払うことで、区分マンションやアパート、戸建ての賃貸経営で、空室が発生した場合に、空室の家賃分を一定額のみ保証するサービスのことをいいます。
空室保証(もしくは空室補償)ですと、補償会社は賃貸管理を行わないので、賃貸を別途不動産会社に委託する必要があります。
物件オーナーは、補償会社に毎月の保証料を支払うことで、空室になった時は、家賃のおよそ80~90%が支払われることになっています。
一方、空室保証(空室補償)は賃貸管理と別ですから、礼金や更新料などの賃料以外の収入はオーナーに支払われます。
保証期間は、補償会社によって様々ですが、2年から30年程度の保証期間が設定されているようです。
なお毎月の家賃収入だけを考えれば、サブリースと空室補償は同じようですが、更新料や礼金など全ての収入からみると収益性は空室保証の方が大きくなります。
もし、賃貸経営の知識や経験があるオーナーでしたら、サブリースではなく空室保証を選ぶとよいですよ。
メリット
空室保証の場合は、礼金や更新料が入ってきます。
そのため、サブリース契約に比べて収益性が上がります。
また、収益性が高まれば金融機関からの融資を受けやすくなるともいえます。
空室保証のメリットは、特に区分マンションや戸建て賃貸の場合に効果があります。
これらの物件は空室率が0か100ですから、入居者がないとまったく利益がなくなり、収益も0になりますが、保証金が入れば一定の収益が確保できます。
さらに、空室保証の場合は通常の管理会社に管理を委託するので、オーナーの意見が反映されやすいというメリットもあります。
入居者を継続的に確保できるかどうか不安な場合だけでしたら、空室保証制度を利用するのがおすすめです。
デメリット
最近は空室補償で100%の家賃を支払う会社もあるようですが、大半の場合8~9割です。
満室になっても全額家賃が支払われない仕組みを採用している会社もありますから、契約書類は十分確認したうえで契約する必要があります。
保証会社と契約すると、家賃は保証会社が設定することができます。
空室になった場合は賃料の8~9割支払わなくてはならないため、保証会社が低めに家賃を設定することもあり、注意が必要です。
また入居者募集期間の数ヶ月は家賃保証しない、という免責事項を設定している場合があります。
退去してからの数カ月間に関しても保証会社から家賃が保証されないときがあり、保証料を支払っているのに、家賃保証されないというケースもでてきます。
契約時にはしっかりと確認をしましょう。
不動産投資の家賃保証を利用する際の判断基準は?
これまで説明してきた通り、家賃保証にも種類があり、それぞれ様々な特徴があります。
不動産投資では物件選びや賃貸管理に対する注意点もさることながら、空室や滞納リスクへの対処が大切になってきます。
家賃保証の利用する際にはどのサービスが自分の物件に合っているのか、しっかりと検討して活用してください。
例えば、サブリース管理に適した物件例をいくつか挙げてみると、管理戸数の多い一棟マンションや一棟アパート、ワンルームタイプ(1Kタイプ)のマンションなど、個人の手腕だけでは、リスク管理が難しい物件です。
収益は減りますし、賃料などの設定もサブリース会社へ任せることになりますが、大きく損をしないという点で利用するメリットはありそうです。
またワンルームマンションの場合、入居者は学生や入社して3年ぐらいの社会人が多いといえます。
この方々は就職や転勤、結婚などを機に退去していきますから、退去のサイクルが早いといえます。
そのため空室になる確率が高く、サブリース管理が効果的だといえます。
また、中古物件で購入時から空室となっている場合は、サブリース管理契約が安心かもしれません。
不動産投資の家賃保証を利用する際の注意点は?
不動産投資の家賃保証を利用する際に注意したいポイントは以下のことになります。
- 保証の免責条件が狭くないか、免責期間が長すぎないか
- 契約を解約するときの条件が、オーナーにとって不利でないか
- 修繕やリフォームの決定権があるか
- 保証内容と見直しの頻度に問題がなさそうか
- 保証会社が安定した経営を継続しており、トラブルがないか
などです。
契約する際は、メリットだけでなく、デメリットもきちんと把握し、気になる点があれば必ず契約前に明確にしておいてください。
まとめ
今回はサブリース契約について説明してきました。
サブリース契約をしているからといって絶対安心とはいえません。
しかし、利用方法によっては保険の一つとして優れています。
サブリース契約の中身をしっかり理解し、自身の知識や経験を増やして収支シミュレーションをしっかり組んだうえ、効率的に使っていきましょう。