不動産投資をして1年ほど過ぎると、いよいよ確定申告をする時期がやってきます。
自分の賃貸物件で収益がいくら出て、それに対して生じた経費の何が計上できるのか、初めての場合は特に分からないこともあるかと思います。
また、この経費をきちんと計上することで、後に税金が還付金として返金されますから、節税に大きく影響してくるのです。
これから、まず不動産投資の確定申告の際に申告できる経費はどんな経費か、そのうち雑費と呼ばれる経費にはどういうものが含まれるかを、説明していきたいと思います。
さらには、確定申告の際に注意したい点もあわせて解説していきますよ。
不動産投資における雑費とは?
不動産投資をして出た収益から、かかった経費を差し引いた金額が、賃貸経営の所得金額になります。
物件の購入初年度に限っての場合ですが、まずは手続きにかかった諸費用が費用として認められます。
例えば、契約書類や登記に必要な印紙代と手数料です。
また、初年に限らず計上できるのが、ローンを組んだ金利分、固定資産税、管理修繕費です。
そして、これに当てはまらないものを「雑費」として計上することができます。
不動産投資で雑費として計上できる勘定科目は?
雑費とは不動産投資にかかった費用ですので、個人的な飲食や交通費などは計上できません。
不動産投資で雑費として認められるものの例を挙げると、物件までの交通費や、不動産で調べ物があって購入した書籍や、セミナーに参加するなどの参加費用などです。
もしどういう勘定科目に計上していいか迷ったら、税理士や専門家に相談すると良いでしょう。
確定申告で雑費として計上できる勘定科目を次に挙げてみましたので、参考にしてみてください。
1)交通費 賃貸物件の様子を確認しに行くなどでかかった電車賃やバス代、高速代
2)通信費 管理会社と連絡のための電話や書類の発送代金など
3)新聞図書費 賃貸経営のため参考にしたい情報を得るため、書籍や有料webを購入した費用、セミナー参加費
4)接待交際費 管理会社と打ち合わせをした際にかかった飲食代や手土産代
5)消耗品費 賃貸物件の管理の為に購入したデジカメやPC、必要に応じて購入した 消耗品費用 (10万円以上だと減価償却費)
それぞれ実際にかかった費用として正しいかどうかを判断するために、領収書が必要になります。
ただし、この中で交通費と通信費は、個人的な用件でも使うこともあるということで、全額の40%程度を申告することが一般的なようです。
不動産投資において雑費の目安はどのくらい?
不動産投資で出た収益には税金はかかりますから、必要経費をその収益から差し引くことで、節税効果が上がります。
つまり、必要経費が多ければ多いほど節税になるのですが、必要経費を際限なく支払った方が良いということではありません。
必要経費として処理できる目安や上限を知って、計上できない経費の使い過ぎを避けるということも大事なことです。
目安は?
では、雑費として申告できる金額とはどのくらいなのでしょうか。
賃貸物件の件数や規模によっても差が出ると思いますが、区分マンション1室だった場合ですと、月平均2万円前後、1年に25万円は雑費として普通に認められるようです。
例えば管理修繕費ですと、マンション全体の大規模修繕費は別とした賃貸物件の部屋の管理修繕費としては、60万円以下で、目安としては3年に1回のメンテナンス工事や設備交換でしたら、経費として計上できます。
この目安を参考に、上限のところで計上すれば効果的な節税ができるといえそうです。
上限は?
雑費とは、交通費や飲食費、新聞図書費などです。
といっても、日常の交通費や飲食代は経費にはできません。
計上できるのはあくまで、不動産投資を行うのに関連した交通費や飲食代の雑費です。
しかしどこまで認められるか、厳密には判断が難しいものがあります。
あくまで現実味があるかどうかが判断の分かれ目です。
例えば不動産に詳しい友人に会いに行き、最近の賃料の情報や修繕管理の相談を食事しながらした場合は、その時の交通費や飲食代を経費にすることができます。
また、旅行に出かけたついでに、行先にある賃貸物件のマンションは確認しに見に行き、その時の交通費が雑費として認められたケースもあります。
物件件数が多く不動産所得が多ければ、その分の雑費は増額して計上できます。
例えば年1,000万円の賃料があり、それに対して固定資産税や管理料、ローンの金利、減価償却費など経費を合わせて1,000万円だったとします。
さらに雑費として交通費、飲食費を100万円が認められたというケースもあります。
そうするとマイナス100万円の収支になり、所得にかかる税金が節税できるということです。
厳密に上限の金額が決められてはいませんので、ケースバイケースで税理士などに相談して考えてみましょう。
雑費を抑えて節税するにはどうする?
基本的に雑費を含めた諸経費が多ければ多いほど、節税できるという点を覚えておきましょう。
そこから言えることは、雑費を抑えて節税するには、他の経費をできるだけ認めてもらうようにする、ということでしょうか。
可能な限り、雑費は計上した方が節税につながります。
不動産投資で雑費計上する際の注意点は?
不動産投資における雑費には交通費の他、通信費、新聞図書費などが計上できます。
この3つの雑費を計上する時の注意点についても解説していきましょう。
1)交通費の経理処理の注意点
不動産投資をしている物件の確認や、管理会社の担当者や修繕工事業者と打合わせのために出向くこともあるかと思います。
そのような交通費や宿泊費は、雑費として経費に認められます。
具体的には「物件を見学する」「調査のために宿泊する」「不動産経営セミナーに参加する」が主な項目です。
その際の旅費交通費として計上できるものは次に通りです。
交通費 電車代 タクシー代 バス代 ガソリン代 駐車場代 高速道路利用代 旅費 宿泊代
ただし、あくまでも不動産経営に直接関係している経費であることが大前提となります。
個人的な旅行などを兼ねる時は、日程表を作成して不動産経営に関係する旅費と個人的なものに区分する工夫が必要です。
またSuicaなどのチャージ額を全額旅費交通費に計上するのは、使途不明なのでやめておきましょう。
※具体的な記録を残すのがポイント
交通費や旅費として認められるかどうかの注意点は、不動産投資に直接関係しているかどうかです。
そのことを証明する必要がありますから、できるだけ領収書はとっておき、具体的な記録を残すことが大切です。
例えば、物件調査で出向く場合は、以下のような点を保管しておくことを注意しましょう。
・見学した物件の概要書
・実際に調査したときの写真
・不動産業者の名刺
・日程表
※具体的な記録が出ない場合は
領収書が出ない例えば、電車やバスなど、公共交通機関を利用した場合、領収書は発行されません。その時には、乗車券や利用交通機関や訪問先をExcelに入力し、運賃を明らかにしておきたいところです。
自動車を個人用と不動投資業務で使う場合は、業務に使った分を経費として計上できます。業務にどれだけ使ったのか、距離数で説明することが大事です。駐車場に関しては、調査で訪れた駐車場代は全額交通費として計上できます。
2)通信費の経理処理の注意点
不動産業務に関する通信費は経費として計上できます。
通信費として計上できるものは、管理会社や不動産仲介会社と電話で話した時や、インターネットで物件を検索した費用です。通信費として認められるためには、不動産業務で必要だったと証明することが大事になります。
具体的な費用としては、以下のようなものになるでしょう。
・通話料
・インターネット通信料
・書類発送料
通信費は交通費や公共料金と同じで、個人使用と業務用の区別が難しいものです。個人用と業務用で重複した場合、その勘定科目は、家事関連費といいます。
この場合には、使用した個人と業務の割合を決めて費用を計上します。これを事業按分といいます。
例えば、毎月の全通信費を事業用の口座から引き落とします。この時には全て事業分の費用ですが、そこから個人使用分を差し引きます。これを事業按分といい、実際に業務で使用した費用だけが計上されます。
※通信費の使用時間の目安を計算
1日のうち、携帯電話を業務用に4時間使ったとします。また個人用として20時間使ったとします。1カ月の携帯電話料が18,000円とすると、不動産投資業務の通信費はこれの1/6ですから3,000円です。大事なのはどれだけ現実味があって、その根拠を説明できるかです。
※荷造運賃と通信費の違いに注意
書類を発送したときの費用は、通信費と運賃の2種類がありますから注意してください。
この分け方は、売り上げに関連したかどうかがポイントです。その費用が売り上げに関連していれば運賃、関連していなければ通信費として処理します。
例えば、書類の郵送などで使用した切手代は通信費となります。これは書類の郵送は、売り上げに直接かかわってなく、事務作業と判断されるためです。
一方、取引先に商品を配送するときは運賃となります。商品を配送することが、売り上げに直接関係していると判断されるためです。
3)新聞図書費の経理処理の注意点
新聞図書費は、物件を探す際に利用した、インターネット検索費や書籍代、またはセミナーに参加したときの費用などをいいます。
経費として計上するには、すべて領収書が必要です。書籍代やセミナー参加は領収証は出ますから問題はないでしょう。
注意したいのは、インターネット検索など通常領収証が出ないものです。しかし、そのような場合でも、有料契約していることが証明できれば、経費として認められます。通帳などの引き落とし明細や契約書は保管しておきましょう。
以上の経費の個人使用と分ける按分は手間がかかり面倒かもしれません。しかし、経費にできれば、税金が還付されるので節約になります。ぜひ研究してみてください。
確定申告をする際に知っておきたいこととは
確定申告を理解するにあたり、まず不動産所得と税金の計算についてもおさらいしておきましょう。
不動産所得と税金(所得税)の算出法
まず不動産所得を割り出します。
計算方法は、不動産所得総金額-必要経費が不動産所得です。
不動産所得の総金額は家賃収入や礼金、賃貸管理会社による空室保証で補填された家賃などの合計額です。
それに対して必要経費は、管理費や修繕費、金利分や固定資産税やそのた雑費の合計です。
こうして割り出した不動産所得に所得税率をかけたものが不動産所得税です。
必要経費が多いほど不動産収入が少なくなり、不動産所得が少なければ少ないほど、不動産所得税が低くなります。
また確定申告の時期ですが、確定申告で必要な書類として、収支内訳書があります。収支内訳書は、その不動産事業所得とかかった経費の勘定目別に表にしてあれば、分かりやすいかと思います。
では、ここからは確定申告をする際に知っておきたいことを3点説明してみたいと思います。
①申告期限を必ず守ること
1年に1度の確定申告は、提出期限が遅れることでペナルティーが課され、本来払う必要もなかった税金を支払う義務まで負わなくてはいけなくなります。期日を守り、申告漏れがないようにするためにも、確定申告の基礎を理解し、正しく納税しましょう。
所得税の申告は、原則として2月16日から3月15日までに税務署に申告する義務があります。確定申告の期限である3月15日を過ぎた場合、どのようになるのでしょうか。
確定申告の期限は厳密で、1日でも過ぎると期限後申告とみなされてしまいます。
さらに税務署に指摘されて期限後申告をした場合は、支払う税額に応じて無申告加算税を支払わなければいけません。延滞をすればその分の延滞税も加算されます。
確定申告の期限を過ぎると、支払い税額が高くなり負担が大きくなってしまいます。期限内に申告できるように準備を進めていきましょう。
②所得隠しはバレるからしないこと
確定申告が必要なのに申告しなかった場合、脱税となってしまいます。
マイナンバーの施行で個人の収入やお金の出入金は掴まれやすくなっています。
脱税が発覚すると、どのような罰則があるのでしょうか?
所得税法238条1項では、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金となります。
更にペナルティーとして加算税があり、過少に申告したら加算税は追加納税額の10%。無申告だったら加算税は50万円までは15%。50万円を超える部分からは20%。不納付の加算税は、納付税額の10%(指摘以前は5%に軽減される場合もある)となっています。
③節税効果を狙いすぎないこと
確かに経費は多ければ多いほど、節税効果が上がるといえます。
しかしだからと言って、なんでも経費にして計上してしまっても、現実味がないと認められません。故意に所得を低く見積もっても、バレるとペナルティーが課せられます。
ですから、不動産投資の節税効果は狙い過ぎず、あくまでも補填的なものと捉えてください。できるだけ、不動産経営の収支を黒字にもっていくよう目指していくのが、本筋かと思われます。
まとめ
不動産投資の経費の雑費と確定申告の注意点などについて、お伝えしてきました。
適切な経費計上で節税して利益を増やすのは、確かに安全な方法だということは言うまでもありません。
しかし、所得隠しやなんでも経費に計上しても認められません。そのような場合には追徴課税もありますから、適切な経費計上して節税効果があれば、ラッキーぐらいの気持ちでいた方が安全だといえるでしょう。