スキームと言う言葉を聞いたことがあるでしょうか。
ご存知の方もいらっしゃると思いますが、計画や体系、枠組みと言う表向きの意味意外に、謀略や陰謀と言ったネガティブな意味も含んでいます。
不動産投資は動く金額も大きいため、様々な人物がお互いにそういった謀略を仕掛け、騙し騙されと言った側面もあるのです。
基本的には公正な取引が行われていますが、一歩違った道を歩むとそういったものが多数ある世界とも言えます。
そんな不動産投資におけるスキームを知っておくことで被害に遭うことを避けることができるのです。
この記事では、この不動産投資におけるスキームについて、またそれらの種類についてお話しします。
この記事を読めば、不動産投資におけるスキームはどんなものがあり、被害に遭わないためにはどうすればいいのかということを知る一助になるのではないでしょうか。
不動産投資におけるスキームとはそもそも何?
不動産投資におけるスキームとはそもそも計画的な不動産投資を行うために仕組みのことです。
冒頭では詐欺の手段のような表現を行いましたが、本来の目的として効率よく利益を上げるための不動産投資における投資の仕組みと言う意味があります。
このスキームという言葉は様々な投資に用いられる言葉であり、資産運用形態の一つである不動産投資においても用いられるようになったという経緯があります。
これは複雑な収益を上げるための仕組みを一言で表す言葉として頻繁に使用され、例えばあるビジネスモデルを表現するために○○スキームと呼んだりします。
そんな便利な言葉、スキームですが、不動産投資では大きなものとして、TMKスキーム、GK-TKスキーム、REITスキームと言ったものがあります。
これらは冒頭で触れた詐欺のための仕組みではなく、一般的な不動産投資における「スキーム(仕組み)」として認知されているものです。
次の項目ではこのTMKスキーム、GK-TKスキーム、REITスキームについてお話をしていきます。
不動産投資におけるスキームの種類
不動産投資におけるスキームとして先ほど紹介したTMKスキーム、GK-TKスキーム、REITスキームについてここでは項目ごとに解説していきます。
これらは基本的に詐欺のためのスキームではなく、効率の良い不動産投資を行うための善良なスキームであることが多いです。
ただし、きちんと業者を選ばないと思わぬ被害に遭い、財産を失うことがあるので注意が必要です。
1. TMKスキームとは?
最初に紹介したいのがTMKスキームです。
これは一言で言うと特定目的会社(TMK)の仕組みを使った不動産投資ファンド(複数の投資家から集めた資金を用いて不動産投資を行いそのリターンを分配する仕組み)のことになります。
ちなみにこのTMKは日本語のtokutei mokuteki kaishaの略で、日本では広く利用されている不動産投資のスキームです。
まずこのTMKについて解説を行います。
このTMK、特定目的会社とは資産の流動化に関する法律(資産流動化法)に基づいて、資産の流動化業務を行うために設立される会社のことで、このTMKスキームの場合、不動産投資を専門に行うために設立された会社を指します。
その業務は、金融機関や不動産会社が持っている不動産を譲り受けることで有価証券を発行し、それを販売して資金を調達するというものです。
これによって、投資家を多く募ることができ、例えば1億円の物件も1,000口の証券に分割することで1口10万円とアマチュアの投資家でも購入できるものになり、資金調達を円滑化することができるのです。
このTKGを用いた不動産投資の手法(スキーム)は2000年施行の資産流動化法によって広く行われるようになったものです。
本題に移ると、このTKGスキームの特徴は3つあります。
1つは会社設立にあたって金融庁への届け出が必要ということです。
冒頭でお話しした通り、詐欺の温床となる危険性を秘めた会社なので、投資家保護の目的で設立には金融庁の窓口となっている各地の財務局へ届け出を行います。
2つ目が届出の際に資産流動化計画の作成及び添付が必要ということです。
資産流動化計画とは資産の流動化をどのように行うのかを定めたもので、会社がきちんと不動産を管理し運用するための仕組みを明示したものになります。
この計画は様式があり、具体的には資金調達の方法や運営計画を記載する必要があります。
3つ目がこれらの計画で決めたこと以外のことは活動できないということです。
例えば、極端な話ですが集めた不動産を証券化して小口にし、販売するということだけしか書いてなければ、それしかできません。
そのため、集めた資金を運用に回すこともこの場合はできないということですね。
この他にも様々な規定や目的がありますが、端的に言うと不動産を証券化して小口化する会社を使った不動産投資のスキームと言えるものになります。
2.GK-TKスキームとは?
GK-TKスキームとは、TMK(特定目的会社)のかわりにGK=Godo Kaisha(合同会社)とTK=Tokumei Kumiai(匿名組合)を利用した不動産投資のスキームになります。
こちらも最初にGKとTKについて触れていきます。
まず、GKとは合同会社で経営者と一部の出資者が同じ会社のことです。
出資者全員の合意で利益の配分を自由に決められることや、決算の公表義務がないという特徴を持っており、自営業がそのまま会社組織になったようなイメージの会社です。
これは出資者(株主)と経営者が異なる株式会社とは対照的な組織になります。
デメリットとして企業として信用されなかったり、社員も出資者なので、社員が減ると資本金も減ってしまうといった特徴があります。
GK-TKスキームはこの合同会社が土地を保有し、さらに投資家から出資を受けるという関係にあるスキーム(仕組み)です。
次にTKですが、これは匿名組合と言って、当事者の一方(匿名組合員)が相手方(営業者)の営業のために出資をなし、その営業より生じる利益の分配を受けることを約束する契約形態を言います。
このGK-TKスキームの場合、合同会社が不動産の価値を小口化した金融商品に対し、投資家が組合員となって匿名組合の契約を結び、お金を出すということです。
このようなことをしようと思った場合、従来は不動産特定共同事業の許可を受ける必要(宅地建物取引業の免許が必要な事業)がありました。
しかし、このスキームが法律(不動産特定共同事業法改正)によって可能となったことにより、この仕組みで不動産投資を募ることの敷居が非常に低くなりました。
更にTMKスキームと異なり、金融庁の認可も必要ないため、かなり容易に不動産投資を募れるスキームとなっているのです。
3. REITスキームとは?
REIT(リート、real estate investment trust)スキームとはREIT(不動産投資信託)を用いたスキームのことです。
これはこれまで紹介したTMKスキームやGK-TKスキームがいわゆるプロや企業向けの不動産投資の手法であったのに対し、個人にもすそ野を広げたスキームになります。
これは投資者から集めた資金で不動産への投資を行い、そこから得られる賃貸料収入や不動産の売買益を原資として投資者に配当する仕組みのことです。
投資法人が不動産を管理し、不動産の賃貸料などの利益を出資者に配当と言う形で渡すというもので、非常に広く行われている不動産投資の方法です。
非常に少額から投資できるだけでなく、REITの証券自身が上場されている場合があるので、個人でも簡単に購入できると言うメリットがあり、今まで紹介した不動産投資の中で最も気軽に参加できるスキームです。
不動産投資におけるスキームの実例
それではここから不動産投資の「スキーム」の実例を紹介しましょう。
良い実例としては、既存型シティホテルの証券化を行ったGK-TKスキームがあります。
これは、もともとあるシティホテルを法人(合同会社)が譲り受け、ホテルを信託銀行が管理(既存のホテルの建物を経営者に貸す)します。
そして、賃貸料を合同会社が受け取るというのが収益の流れです。
この流れに対して、投資家が合同会社と匿名組合を組み出資を募ります。
ここまではシンプルなGK-TKスキームなのですが、実際は更に複雑なものとなっており、匿名組合だけではシティホテルを買い取ることができなかったので、レンダーと呼ばれる組織からお金を借り、一般社団法人から資本金を受け、アドバイザー的な存在としてアセットマネージャーとAM契約を結んでしまいます。
このように実際のスキームはかなり複雑なものとなっているのです。
詐欺スキームで被害を受けないように気を付けるべきことは?
不動産投資のスキームは実例の通り、型にはまらない複雑なものが多いです。
そして参入もしやすくなったため詐欺のようなスキームも増えているのが実際の状況と言えます。
そんな悪質なスキームに遭わないための注意点は3つあります。
それは、第三者に判断を仰ぐ、不動産投資の知識をつける、資金に余裕のある範囲で行うといったことです。
不動産投資のスキームは複雑なものが多く、つい出資を募る法人の言うことを鵜呑みにしてしまいがちです。
しかし、それでは相手の思うつぼで、詐欺案件の場合そのまま出資金だけ奪われ、わずかな配当、もしくは組織がうやむやになって持ち逃げされてしまうという被害もあります。
そうならないために一呼吸おいて、利害関係のない不動産投資に詳しい第三者に状況を冷静かつ客観的に判断してもらうことが大切です。
判断が難しい投資案件の場合は、お金を払ってプロに見てもらうほど注意すべき場合もあります。
また、不動産投資の知識をつけることも大切です。
特にスキーム関連の法律は改正され、より敷居が低くなり詐欺師も利用しやすくなっています。
さらに新しい用語も次々に出てくるため、何を話しているのか分からないまま契約してしまうことすらあります。
そうならないために、契約から償還までのプロセス、お金の流れ、なぜ利益が発生するのか、どんな商品が存在するのか、平均してどのくらいの利回りなのかと言った投資の基本を抑えておきましょう。
不動産投資は様々なスキームによって小口化が進み、借金をしてまで行う必要はなくなってきました。
そのため、上場されたREITなどの安全なものであっても、万が一に合わせて余剰資金で運用を依頼することが大切です。
詐欺のようなスキームでなくとも運営が行き詰まって配当がなくなることもあり得ますから、そのようは被害を最小限に抑えるように対策をしていきましょう。
まとめ
不動産投資は様々なスキームが誕生したため、より敷居が低くなり、個人でも利用することができるようになってきました。
しかし一方で、詐欺目的でスキームを利用する場合もありますから、そのような被害に遭わないように第三者のアドバイスや知識の充実、そして余剰資金での投資と言った自衛策をとることも重要です。