近年、日本に在留資格を持った外国人が増加してきており、今後は政府も移民受け入れ政策を進める計画もあるといわれています。賃貸住宅を経営しているオーナーにとっては、外国人の入居希望者への対応が生じてくる可能性も少なからずありそうです。
実際に現在も、賃貸物件の空き室を解消したい理由から外国人の入居を検討している方もいるかと思います。また外国人入居者はトラブルが多いので、できれば避けたいとと入居を断り続けているオーナーも少なくないとも言えます。
ここからは、そんな外国人入居者を受け入れるメリットや、契約の時に注意すべき点について説明していきたいと思います。
不動産投資をする上で外国人を受け入れるメリットは?
「外国人の入居者はトラブルばかり起こす」というイメージをお持ちの方も多いでしょうが、実は外国人と不動産賃貸契約を結ぶことはメリットも確かにあるのです。これから3つ代表的なものを紹介してみたいと思います。
【入居者の募集人口が広がる】
日本人だけに募集を限るよりも、外国人にも入居してもらうように条件を変えることで、入居者募集人口が広がります。当然、間口が広がりますから入居者が決まる確率は高くなります。
2017年には、日本で生活する外国人の人口が250万人に達したとのことです。今後も増加傾向は続くでしょうから、オーナーが外国人の入居者もターゲットにした賃貸経営を行えば、空き室対策にとってかなり効果があるといえそうです。
【募集チャンスは年中OK】
日本人の入居者に限った場合は、だいたい一年の2~3月と10月前後は入退室が多く、繁忙期といわれています。しかし、この時期を逃してしまうと、なかなか入居者が決まらないということになりがちです。
もし外国人入居者を受け入れれば、季節や年度変わりなどは特に影響なく、常に入居者希望者がいるという状況にすることができるかもしれません。これはオーナーにとっては嬉しいメリットとなります。
まだ外国人入居希望者は入居を拒否されることが多いという現状です。そういった状況にある外国人であれば、早期で空き室を埋めてくれる可能性は高く、収益減にならずにすみそうです。
【入居者は紹介で決まりやすい】
日本に住んでいる外国人は、同じ国同士のコミュニティが密度の高いものになっています。
ですから、同じ国や、地域の仲間のつながりで次の入居者が決まりやすいのです。入居者の紹介で、空き室が埋まるので不動産会社へ募集依頼をしなくてすむというメリットがあります。つまり仲介手数料もかからない、ということになります。
また、空き室が発生してしまった場合にも、現在の入居者が友達を紹介してくれるということは、空き室が増加していく今後、賃貸経営するオーナーにはメリットとなるのではないでしょうか。
不動産物件に外国人を入居させる際の注意点は?
外国人に限らず、賃貸経営において自分の収益物件にどんな人に入居してもらうかということは、かなり重要なことです。良い入居者に入ってもらえば、その後もトラブルはほとんどないかもしれません。しかし常識のないルーズな入居者にあたってしまった場合は、後々何かの機会があるごとにトラブルになるケースが高いのです。
家賃の滞納があればキャッシュフローが悪化します。入居者がトラブルを起こせば、物件の資産価値が下がることも十分考えられます。
日本人でも入居者の人間性を判断するのは難しいのですが、特に外国人入居者には、細心の注意が必要になってきます。言葉も文化も、さらには価値観も異なる外国人を入居させるのですから当然のことといえます。
そこで、今回は外国人を入居させたことによる失敗談と外国人を入居させる際の注意点について考えてみたいと思います。
【事前の入居審査を厳しくする】
賃貸物件に外国人の入居者を受け入れる際には、事前の入居審査でチェックを厳しくすることが重要です。
具体的にいうと、不法就労者かどうかを見分けることです。外国籍の本人確認は、市区町村で発行する外国人登録証明書を確認することでわかります。外国人登録証明書には、氏名と居住地、在留資格、在留期間が記載された在留カードと、特別永住者証明書がありあますので、まずはその証明書を確認しての本人確認を行うことです。
また、併せて勤務先の健康保険証もチェックしましょう。勤務先に在職確認を行い、勤務実態があるかどうかをも認しましょう。これを審査で行なっておけば、不法就労者を審査で断ることができます。
【賃貸借契約は面談にする】
トラブルを起こすタイプか、そうでないか判別するのは難しいことですが、対策として入居者に実際に会って審査することをおすすめします。
面談で契約締結した方が、未然にトラブルを防げることが多いようです。時間をきちんと守れるか、片言であっても誠実さが伝わるか、初対面の印象の良し悪しは人物を判断する良い基準になります。
また、話し方や態度でコミュニケーション能力もわかります。一方、書類に不備があったり、面談の時間に遅刻してきたりと、いい加減な人は家賃の振込みもいい加減になりがちです。
契約時には、入居者を判断する貴重な機会になりますので、場合によっては通訳を頼んで、しっかり面談するようにしましょう。
【賃貸借契約に特記事項を記載する】
事前の審査を入念にしただけでは見抜けないこともあります。
例えば虚偽の報告です。勤務実態がないのにあったかのように申告もできますから、勤務実態などの虚偽報告があった場合には、賃貸借契約を即時解除するという項目を賃貸契約書に入れておくことも重要になります。
【家賃保証会社を信用しすぎない】
外国人の入居審査については、家賃保証会社で審査が通れば、それで安心できると信用しすぎることも注意したい点です。
先にも触れましたが、できるだけ面談の機会を設けて、賃貸借契約書を書いてもらうなど入居者の人となりを見て、オーナーが自分で判断をしましょう。家賃保証会社の審査が通り、信用のある会社に勤務して家賃の支払能力さえあれば、外国人の入居を許可するオーナーも多いようです。
しかしながら、やはり文化や価値観の違いからトラブルを起こすケースも後を絶ちません。
問題行為が発生したら、その都度注意するなど地道なコミュニケーションの積み重ねで入居者に理解してもらえることも多いものです。入居者管理には配慮が必要なので、管理会社に丸投げをするのは止めた方がいいでしょう。
実はトラブル多数?外国人入居者とのトラブルとは?
大手企業に勤務して、家賃保証会社の審査が通り、連帯保証人もいるなど、一見、問題がない外国人入居者でも、文化や習慣の違いからトラブルになってしまうことが実は、たくさんあるようです。
これから実際にどんなことが問題になるのかを説明していきたいと思います。
【不法滞在者】
マンションの駐輪場の自転車の数が急に増え、調べると物件を借りた人の部屋に不法滞在の外国人が大勢住んでいたというケースです。
連帯保証人に連絡しても、実際には連帯保証人は架空の人物だったということも多いそうです。オーナーが近隣の人に調査してみて始めて、入居審査を経ていない不法滞在者がいたことが分かる、ということも多発しています。
こうした状況だと、喧嘩で警察沙汰に発展するケースもあるため注意が必要です。
【ごみの分別をしない】
住んでいた国の違いによる、生活習慣の違いも大きな問題になっています。
外国人入居者は、ごみを分別して集積場に出すという習慣がありません。管理会社が注意しても、ごみの分別はしないことが多いようで、市区町村からの苦情や相談が寄せられるとのことです。
【靴のまま部屋に入る】
靴を脱ぐという習慣がない外国人は多く、その場合、部屋に土足で上がりこんでしまうこともあります。
汚れても掃除するという認識がないため、床が大変消耗してしまうことも。退去時には、リフォームを全面的に行わなければならず、費用が当然かさみます。
さらには、物件自体の評価の低下につながり、環境を重視する優良な入居者を集めるのも難しくなるリスクがあります。
【早朝深夜の騒音がはげしい】
例えば外国人入居者が、ベランダで鶏や家畜を飼っていて、早朝の鳴き声で近隣住民との騒音トラブルに発展というケースもあります。家畜ですと騒音だけでなく、悪臭の問題も出てきます。
またワンルームに10人もの不法滞在者が住んでいて、深夜の騒音で近隣住民とのトラブルに発展していくという事例も少なくはないということです。
【常習的に家賃滞納する】
最後に家賃滞納です。
家賃保証会社で審査が通っていれば、それほど問題はないと思われがちですが、出稼ぎに来ている外国人入居者の場合などに実際に起きているトラブルです。
外国の習慣や価値観の違いで、期日を守らなければいけないという認識自体が、そもそも不足していることもあります。
外国人入居希望者にどう対応すべき?
メジャーなIT通信企業や、日本の大企業に勤務する外国人が増え、入居需要が高いエリアが出てきています。また一方で、母国にいる家族へ仕送りをするために日本で働く外国人も相当数います。
そういった外国人の在日事情と、昨今の日本人の人口減少の状況などの理由から、外国人を対象に入居者募集を掛ける大家さんが増えてきました。ただ外国人の入居者は文化や価値観の違いも大きく、なかなか日本の賃貸住宅に馴染めませんから、トラブルが生じるのはやむを得ないことだといえます。
では、もし自分の所有する収益物件に外国人入居者が希望したら、実際どうしたらよいのでしょう。正直なところ、かなり決断に迷うと思います。これまで、現実的なこととして検討してこなかったため、外国人入居者へのイメージは「トラブルが多そう」という先入観が先に立ってしまうからです。
しかし、今まで述べてきたようなメリットや入居時の厳しい審査の存在により、これまで拒否傾向だった外国人入居者の受け入れに対して、検討してみようという意識が出てきたというのも、事実です。
また、外国人入居者の実情を考えてみると、明らかにここ10年で変ってきていることもわかります。2008年頃までは、不法滞在の外国人が賃貸契約を結んでいる外国人入居者の部屋に大勢で住みつき、トラブルになるニュースもよく聞きました。しかし最近では、欧米アジア諸国の所得水準や生活レベルの差がなくなってきており、外国籍の優秀な人材が多数日本で働いているという印象が、以前より確かに感じられています。
こうした日本で暮らす外国人の変化から、不動産へ投資している人も外国人入居者に寛容になっていると聞いています。今回紹介してきたケースのように、家賃保証会社の審査が通り、大企業に所属して支払能力があれば外国人の入居を許可している方も多いようです。
とはいえ価値観や文化の違いは、なかなか事前の書類審査や面談などの入居審査だけでは分からないものです。外国人の方へ価値観の違いや文化の違いを理解してもらうために、相当の根気と労力が必要だといえるでしょう。
まとめ
これから先、賃貸物件に外国人入居者の受け入れるかどうかをしっかりと検討しなくてはならないということが、おわかりいただけたと思います。
受け入れるか否かは、賃貸経営の考え方と、状況次第。
様々なリスクの対処法はありますので、不動産投資の一つの経営方法として知識を深めておくのことが大切だといえるでしょう。