入居者の募集をかけても空室がなかなか埋まらない、ということを経験したオーナーも多いかと思います。
そんな時、所有物件に適した対策を行わなければ、空室期間がさらに長引き、収益に悪影響を及ぼします。
今回は空室対策の方法や、空室対策を行う際の注意点をまとめました。
これから賃貸経営を始める方や、既に空室期間が長く悩んでいる方はどうぞ参考にしてみてください。
空室ができたからと言って家賃や敷金返金などをすぐに下げない方が良い理由は?
空き室が出て次の入居者が決まらない時、管理会社やサブリース会社から賃料を減額してみてはどうか、と提案されることがあると思います。でもこの時、不安に駆られて言われるままに賃料の減額に応じてはいけません。
なぜなら、いったん賃料を下げてしまうと、下がった賃料のまま長い期間継続してしまうからです。いったん減額した賃料をもとの賃料に戻すのは、なかなか難しいといえます。
そして物件の価値判断は、賃貸収入から測定する収益還元法で行っています。
一度、家賃を下げてしまうと、物件の資産価値が低下してしまうのです。もし物件を売却したい時に、販売不動産会社の査定が低くなってしまうというデメリットにつながります。
また、近隣の相場より家賃を下げて入居者を確保しても、家賃の値下げを聞きつけた既存の入居者から家賃交渉され、全体の収益が低下する恐れがあります。
以上のことから、家賃の値下げは、入居してもらうための工夫を色々行ったにもかかわらず、効果がなかった場合の最終手段として行うべきでしょう。
家賃の減額は、賃貸経営において長く悪影響を及ぼしますので、まずは家賃を下げる前に何かできることはないかを考えるようにして下さい。
保有物件に空室ができた時の対策
では、空き室が出て入居者が決まらない場合には、どんな対策を行ったら良いのかを、これから紹介していきたいと思います。
外国人入居者を受け入れてみる
不動産管理会社から外国人の入居希望者を紹介された場合、先入観だけで断ってしまうのはもったいないかもしれません。
現在、外国人入居者は貴重な入居希望者です。2017年に、日本で生活する外国人は約250万人に達したというデータがあります。
確かに日本の常識やマナーにおいて不安な点も多々あるかもしれません。トラブルも起きるかもしれません。しかし、生活のルールを丁寧に説明し、契約では通訳を立てて行うなどでこういった問題は軽減できることでもあります。
尚、外国人入居者の受け入れには、家賃滞納保証会社の審査が通るかどうか、の注意点も理解しておくことが大切になってきます。
募集条件を変えてみる
空き室対策で一般的な方法としては、募集条件を緩くしてみるという方法があります。入居者の多様なニーズに応えて、従来当たり前だったことを見直し、新しい世代に合わせていくことも、空き室対策には必要なことかもしれません。募集条件の緩和にはいくつかのポイントがありますので、順番に説明していきたいと思います。
【連帯保証人を不要に】
賃貸アパートやマンションに入居する際には、入居者が賃料を払えなくなったり、過失で物件を傷つけたりしたら、連帯保証人にそれを肩代わりするという意味で、連帯保証人を立てることが従来は普通でした。
しかし、最近ではこの連帯保証人を不要にするという条件で、賃貸契約を行うケースも増えてきています。自分の身内に保証人になってもらわなくても、家賃保証会社で代行してくれることができるのです。
入居する側からすると、募集条件の緩和ということで入居を決めやすいといえそうです。
【賃貸のカード決済可】
キャッシュレス傾向の進む昨今では、家賃をカード決済できるということも入居条件の緩和策として有効かと思います。賃料ですと毎月、まとまった金額のポイントが貯まります。
もし家賃をカード決済できるようにすれば、若い世代に喜ばれることでしょう。
ただしこの場合は、物件のオーナーにカード手数料が発生します。
【内装変更DIY可能】
さら、入居者によるDIYを可能にするという条件にしたり、入居者に壁紙を選ばせてあげるという空室対策もあります。
この場合、費用はオーナー負担となります。
【ルームシェア可能】
複数人数での賃貸を可能にするルームシェア可の物件にする方法もあります。この時には管理組合に規定や、近隣入居者に確認をとることをお勧めします。
場合によっては騒音による苦情が出ることもあります。そういう環境を嫌がる入居者もいますので、事前確認するようにしましょう。
【ペットや楽器可能】
ペットや楽器が可能な物件にすることで、入居者の間口はさらに広がります。
その際には、ペットや楽器可にできるための内装の検討は必要です。床をペット対応のフローリングに換えたりなど、ペットが粗相をしたり、壁に足をかけ爪を砥いだりして傷つくのをあらかじめ予防することができます。消臭機能のある壁材もあるので、玄関などに配置できるとなおよいですね。
楽器可の場合は防音機能のついた壁材やフローリングなどにすることが必要です。
いずれも、同じマンションやアパートに住む入居者に影響があることなので、区分であれば、建物管理組合の規定を確認しましょう。
【単身高齢者可能】
特に、単身高齢者は賃貸のニーズが高いですが、単身高齢者の入居を嫌うオーナーも実際に多く、需要がありながら、供給されにくいというミスマッチが生じています。
この時に注意したいのは、
・契約相手を高齢入居者の家族にする
・管理会社に定期巡回を依頼する
など、工夫次第ではリスクを事前に回避できるということです。
リフォームしてみる
空き室の出る物件の場合、築年数が経って水回りやセキュリティー設備で、他の物件に見劣りしてしまっていることが原因の場合があります。リフォームはお金はかかりますが高い効果が期待できますので、ぜひ検討してみることをおすすめします。
ここからは、比較的少額でできるものから、水回りなどの高額なリフォームまでをご紹介してみますので、参考にしてみてください。
【セキュリティー系のリフォーム】
少額リフォームで、もっとも入居者に訴求できるリフォームは、セキュリティー系の設備といわれています。
例えば、
・オートロック
・監視カメラ
・モニター付きインターフォン
・ディンプルキー
などです。
築年数の経ったアパートは、オートロックでない部屋が多いのではないでしょうか。古いアパートでも門扉を一枚設置して、その門扉にオートロック機能を付けることもできます。
【和室リフォーム】
今から30年前に建てた物件ですと、現在の入居者のニーズと合わなくなっていることがあります。
その一つが和室。30年前の2DK以上の間取なら1室は和室というのは普通でした。しかし今はベッドや家具が置きにくいなど、敬遠されがちです。和室を洋室にリフォームすることで、空き室対策の効果があります。
ただ和室から洋室する場合、畳だけフローリングにしても和室の雰囲気が残ります。完全な洋室にするにはかなり費用がかかるので、コスト面での工夫は必要です。
【トイレ、バス、洗面所リフォーム】
いわゆる風呂とトイレ、洗面所が1つになっている3点ユニットも、募集の際にマイナス要因になっています。
最低限トイレとお風呂は別々の間取りにしたいところです。その場合ユニットバスは丸ごと交換しなくてはなりませんから、風呂とトイレを分離し、新たな位置に水回りを設置するという大工事になります。
空き室対策としては確かに効果があるのですが、費用対効果を物件ごとに検討したうえで行ってください。
【デザイン性重視の家具付きリフォーム】
設備や水回りなどは他物件と同様でも、内装をデザイン性の高いものにして差別化を図るリフォームも効果があります。
およそ賃貸アパートやマンションは、一般受けするようなデザインで設計されています。そこでリフォームするならあえて、プロヴァンス風にする、北欧テイストのキッチンにするなど、がらりと変えて家具付きにしてみるのも良いと思います。
フリーレント期間をつけてみる
一時金といわれる敷金や礼金を下げる方法はよく使われますが、さらにフリーレント期間を設けるという方法もあります。つまり家賃の無料期間を設けることです。
入居の際に初期費用はばかになりません。もし、同じエリアで立地条件も同じような部屋があったら、フリーレント期間のある物件を選ぶ可能性が高いでしょう。オーナーにとっては賃料を下げるよりも得策といえそうです。
仲介会社へ謝礼金を出してみる
もし仲介会社の動きが良くない場合は、仲介会社へ謝礼金を出してみるのも効果的です。
多くの物件を抱える担当者にとっては、どの物件も同じように労力をかけられない場合もあるでしょう。こうした時に、入居者が決まったら謝礼金を出すという話を持ち出してみるのも良いと思います。
入居を決めるために、仲介会社は優先案件として動いてくれるでしょう。
不動産管理会社を変更してみる
入居者募集を依頼する不動産会社を1社だけに絞ると、入居者が決まらないケースもあります。依頼している不動産会社の実績に問題ないならいいのですが、その不動産会社に力がないと、入居者は決まらないままになってしまいます。
例えば成功している不動産オーナーは、複数の不動産会社に募集を依頼するのが普通になっています。募集の強化は空室対策に最も効果がありますので、もし、今の管理会社より力のある会社があれば変更した方が良さそうです。
実際の不動産投資の空室対策の成功事例は?
とはいえ、実際上の対策が有効かは分かりませんよね。
そこで、ここでは実際に空室対策をして成功した事例をお伝えしていきましょう。
68室で空室ほぼなし!空いた部屋もすぐ入居が決まるHさん
現在68室を所有しているHさんは、不動産会社で働いていました。ご自分の不動産では、空いたばかりの空き室が1部屋あるだけとのことです。これまで賃料の減額はしたことがなく、1ヶ月以上空室になったことはないといいます。
Hさんの空き室対策は、空室に対して迅速な動きをすることだといいます。退去通告があったら、すぐ募集行動を開始し、クリーニングが終了した日から即入居ができるように準備をします。
またHさんは所有する物件に自信があるといいます。家具や家電付きで、カウンターキッチンまで自分で企画し、競争力のある物件だと確信しているため、近隣の新築にも勝てると判断すれば、家賃は値上げするということです。
もう一つ、成功の秘訣をあげるとすると、管理会社とのチームワークということでした。 管理と募集を依頼するのは、まずHさんが働いていた不動産会社。もう1社は地元の不動産会社です。地元の会社は不動産会社で働いていた時に知り合った信頼できる方にお願いしたといいます。その会社が家具と家電付、マンスリーなど一人暮らしの入居を決めるのが得意だったので、Hさんも所有物件を家具家電付やマンスリーとして企画しました。
管理会社とは入居案内状況や入居者のトレンドの話ができる関係性が大事だと実感しているとのことです。不動産業界でのノウハウと戦略を生かした賃貸経営は、お手本になりそうです。
空室は全体をリフォーム 宣伝費を惜しまない!郊外で40戸中35室入居者ありのUさん
以前は会社に勤務しながら、親の所有する物件でサラリーマン大家をしていたというUさん。現在は専業で5棟40室のアパートを賃貸経営しています。首都圏でない郊外でも35室は入居中ということです。
空き室対策としてどんなことに気を使っているかというと、空き室が出るとすぐリフォームするようにしているそうです。壁紙やフローリングだけ替えるのでなく、全体に手を付けることが良いということです。
そしてもう一つ、管理会社には広告宣伝費を払っているそうです。首都圏でない郊外に物件を持っていると、どうしても戸建購入を検討する人が多いということで、そういった状況の中、動いてくれる不動産会社へは謝礼金として宣伝費を上乗せして払うことも有効だといいます。
また物件のあるエリアは、外国籍の方が多いので入居してもらっていますが、日本人の生活ルールやマナーの違いによるトラブル回避策は入念にするとのこと。管理会社とは状況確認のやり取りを定期的に行い、何か変わったことがあれば迅速に対応をしています。
空き室にしない対策をしっかり取って、リスクにも丁寧に備える姿勢がとても大事なことだとわかります。
それでも空室が続く場合には、早めに不動産を売却するのもあり?
以上のことを実行してみても空き室が続くようでしたら、不動産を売却した方が良いかもしれません。
しかし、その際には一般的に売却益はそれほど期待できません。賃貸経営の規模にもよりますが、空き室率が高いということは、物件自体の価値が低く査定される可能性が高いので、年間の家賃収入÷表面利回りで査定金額を出した場合に不利です。
しかしこの表面利回り以外にも、査定金額を左右する要素はあります。例えば東京オリンピックを境に、政府は将来的に移民政策を行う構想があります。それが現実になれば、日本人に人気がなくても、外国籍の方にとっては住みやすい物件となる可能性があります。
また、今後は介護人口が増えるため、介護付き高齢者住宅の需要が高まると予測されています。空室率の高い物件でも、低金利ならばこうした住宅用に再開発できる可能性もあります。
あくまで空室率は不動産の価値を示す1つのパロメータです。空室率と売却額は直接結びつくものではありませんので、他の要素で売却益を上昇させることができるということは、お伝えしたいと思います。
まとめ
様々な状況で空き室は必ず出てきます。その際にするべきことは、賃貸料の減額でないことが、これまでの説明でわかっていただけたと思います。おそらく、これまで述べてきた対策を講じることで、空室リスクを低下させることができるでしょう。
常々いわれることですが、不動産は数十年単位で収益を考える長期型の投資です。やるべきことをやれば、より多くの収益を手にすることができることでしょう。