不動産投資を計画している人の中で、出口戦略について考えているという人も多いのではないでしょうか。
不動産投資において、出口戦略は非常に重要なポイントとなってきます。出口戦略についてイマイチ理解できていないという人も、しっかりとおさえておきましょう。
今回は、不動産投資の具体的な出口戦略の立て方や成功事例を紹介していきながら、不動産投資における出口戦略について解説していきます。
不動産投資における出口戦略とは?
不動産投資における出口戦略とは何でしょうか。
出口戦略とは、不動産投資を行った後に物件を売却して最終的な利益を得る戦略の事を指しています。
例えば1000万円で購入した物件を家賃5万円で10年間貸し出し、その後1200万円で売った場合を考えてみます。この場合、10年分の家賃収入である600万円と物件の売却益である200万円を合わせた800万円が最終的な利益となります。
この最終的な利益をできるだけ大きくしていこうと考える事が不動産投資における出口戦略なのです。
出口戦略をはじめに設定した方が良い理由は?
不動産投資を始める際には、あらかじめ出口戦略を設定しておく事をおすすめします。出口戦略をまずはじめに設定した方が良い理由について紹介していきます。
不動産投資の最終的な利益を最大化させるため
不動産投資において出口戦略をはじめに設定した方が良い最も大きな理由が、不動産投資の最終的な利益を最大化させるというものです。
基本的に不動産投資は、不動産を保有して家賃収入を得るというインカムゲインを重視した投資になります。
しかし、物件を売却した際に売却損が発生し、保有期間のインカムゲインを入れても、最終的に赤字になってしまうようなケースもあります。
また不動産投資ローンを利用していた場合、借金だけが残ってしまうという最悪のケースも考えられるのです。そのため、不動産投資を成功させるためには、最終的な利益を最大化させるための出口戦略を、まずはじめに設定しておく事が非常に重要となってきます。
環境の変化やリスクに対応していくため
不動産投資はミドルリスクミドルリターンの投資先と言われており、安定した収益を産み出すという点が魅力的です。
しかしながら、不動産投資は事業性のある投資となりますので、環境の変化やリスクにしっかりと対応していかなければなりません。
保有している物件についても経年劣化や周辺環境の変化、人口動態等、注意をしていく必要のあるリスク因子はたくさんあります。こうした事業環境の変化に柔軟に対応していくために、保有物件を売却するという選択肢は常に持っておきたいと言えるでしょう。
他の投資機会を見逃さないため
不動産投資を行っていると、自分が保有している物件よりも魅力的な物件が見つかるような事もあります。
そのような場合、保有物件を売却して新しい物件を購入するための資金に充てたいと考える人もいるでしょう。保有物件を入れ替えていきながら、資産を増やしていくという事も目指す事ができます。
しかし不動産は比較的流動性が低い資産になりますので、出口戦略をしっかりと頭に入れておかないと、他の物件にスムーズに乗り換える事は難しくなってくるでしょう。
保有物件の手離れを良くしておけば、他の投資機会を見逃す事はありません。
新築物件と中古物件の出口戦略は違う?
不動産投資では、主に新築物件への投資と中古物件への投資に分かれています。新築物件と中古物件の出口戦略は違うのでしょうか。新築物件と中古物件の出口戦略について考えていきます。
新築物件の場合は?
新築物件は資産価値が高く、購入価格も高くなってきますので利回りは低くなる傾向があります。
ただし、新築物件は人気もありますので、安定して運用する事ができます。しかし注意すべき点として、利回りが低いため不動産投資ローンを利用するとキャッシュフローが赤字になる事もあるという点が挙げられます。
そのような場合は出口戦略として、短期間での売却はあまりおすすめできません。安定した運営をしていきながら長期的な視点で資産形成を行い、適切な出口戦略を練っていきましょう。
中古物件の場合は?
中古物件の場合は、新築物件と比べて購入価格が安くなるため利回りが高くなるという傾向があります。そのため、新築物件と比べても短期間で収益を上げる事ができるようになるでしょう。中古物件の場合は、短期的な売買を繰り返して収益を出していくという方法も可能です。
ただし築古物件は資産価値が出にくく、売却が難しくなるケースもあります。また、管理費や修繕費等が高くなっていく傾向もありますので注意が必要です。
物件ごとに見る出口戦略の成功事例
物件のタイプごとにも出口戦略は若干変わってきます。ここでは、物件ごとに見る出口戦略の成功事例を紹介していきます。
ワンルームマンション
新築のワンルームマンションを総額2000万円で購入したAさんの事例を紹介します。
この物件の家賃収入は月10万円で空室率は5パーセントでした。この物件を7年間保有しその後、総額1800万円で売却しています。
7年間の家賃収入は総額798万円となります。物件価値が下落し売却損が出ていますが、売却損は200万円に留まっており、家賃収入と合算すると最終的な利益は598万円となっています。
Aさんは7年間で約600万円の利益を得る事ができました。新築物件は資産価値が高く、物件価格が下がりにくいという特徴があります。また家賃収入も高めに設定できるため、こちらのケースでは7年程度の運用でもしっかりと利益を残す事ができています。
ファミリータイプマンション
中古のファミリータイプマンションを総額2500万円で購入したBさんの事例を紹介します。
この物件の家賃収入は月15万円で空室期間がありませんでした。この物件を10年間保有しその後、購入価格と同じ総額2500万円で売却しました。
10年間の家賃収入は総額1800万円です。購入価格と同額で売却できたため、売却の際の損益は発生していません。10年間で得られた1800万円の家賃収入のすべてが最終的な利益となります。
ファミリータイプのマンションでは、いったん入居者が付くと長く居住する傾向があります。そのため収益が安定し、管理状況が良ければ売却の際にも値下がりしにくいという特徴があります。
このケースのように、物件の購入価格と同額で売却することができれば、得られた家賃収入がすべて最終的な利益となってきます。
戸建て住宅
中古の戸建住宅を総額500万円で購入したCさんの事例を紹介します。
この物件は元々空き家だったので、Cさんはリフォームによるバリューアップを考える事にしました。総額300万円をかけてリフォームし、家賃10万円で貸し出す事になりました。それから5年後、この物件を1000万円で売却しています。
5年間で得られた家賃収入の総額は600万円です。また、500万円の購入価格と300万円のリフォーム費用が掛かっていたため、物件取得費の総額は800万円となります。
このケースでは、物件を1000万円で売却できているので、200万円の売却益が発生しています。これらを合わせると、Cさんが得た最終的な利益は総額800万円という事になります。
約5年間の保有期間であったにもかかわらず、非常に高い収益率になっていると言えるでしょう。戸建投資では、リフォームによるバリューアップや高い利回りが狙えるという特徴があります。
一棟アパート
中古の一棟アパートを総額5000万円で購入したDさんの事例を紹介します。
全部で8戸の部屋があるのですが、購入時点で空室が4戸ありました。しかし、Dさんの営業努力の成果もあり1年後には満室になりました。すべての部屋は家賃6万5000円で貸し出されています。
Dさんは、このアパートを購入から7年後に7000万円で売却することができました。
家賃収入は1年目は312万円でしたが、2年目以降は624万円になりました。得られた家賃収入の総額は4056万円です。また、5000万円で取得した物件が7000万円で売れたため、売却益が2000万円となりました。
これらを合わせると、最終的な利益は約6000万円となります。
Dさんは、非常に大きな収益を上げる事に成功しました。一棟アパート投資では、空室を埋める事で利回りが上昇し、売却の際に価値が上がるというケースもあります。
不動産投資における出口戦略の立て方は?
不動産投資の出口戦略は、どのように立てていけばいいのでしょうか。不動産投資における出口戦略の立て方について解説していきます。
不動産投資を行う際、売却を視野に入れた物件に投資をする
不動産投資の出口戦略は、入口の段階から始まっています。
不動産投資を行う際には、売却を視野に入れた物件に投資をしていきましょう。
自分の次に物件のオーナーとなる人が、買いたくなるような物件を選んでいく事が重要です。具体的に見るポイントとしては、将来的にも安定した需要が望める物件であるかどうかという点や、物件の耐久性が高く管理状況も良好であるかどうかといった点が挙げられます。
投資家目線で評価できる物件を購入できているかどうかで、出口戦略もある程度決まってきます。
買い手が付きやすい状態にして売却をする
保有している不動産を売却する際には、不動産市場で買い手が付きやすい状態にして売却をする事も重要です。
具体的な例としては、物件を適切な状態に保った上で売却をしたり、賃借人を付けた状態で売却をしたりすること等が挙げられます。また、リフォーム等のバリューアップをする事で、より高く売却できるようなケースもあります。
次の物件オーナーである買い手の人が、安心して不動産経営をできるような状態にしておくことが大事です。
不動産投資における出口戦略を立てる際の注意点は?
不動産投資における出口戦略を立てる際には、どのような事に注意していけばいいでしょうか。不動産投資における出口戦略を立てる際の注意点について紹介していきます。
損益分岐点に注意
不動産投資における出口戦略を立てる際に最も注意しておかなけらばならない点が損益分岐点です。
損益分岐点とは、物件取得費用と経費から得られた家賃収入と売却の際に得られる資金を引いた値がプラスかマイナスに分かれる分岐点の事を指しています。
損益分岐点からマイナスであると、不動産投資に失敗した事になります。
そのため出口戦略を立てる際には、損益分岐点からきちんとプラスであるかどうかを精査していく必要があります。また、不動産の取得や売買には様々な経費や税金が発生しますので、これらの点にも注意しておきましょう。
売却のタイミングに注意
不動産投資における出口戦略では、売却のタイミングにも注意しておきましょう。
不動産価格は他の金融商品等と比較すると安定しているとは言え、日々変動しています。不動産市況や近隣不動産の動向、季節要因等で、売却価格も変化していくのです。
高く売却できるタイミングは、保有物件や環境等によってケースバイケースとなりますが、常に保有物件の価格を考えていきながら売却のタイミングに注意しておく事が重要です。
短期譲渡と長期譲渡の税率の違いに注意
不動産を売却する際には、保有期間によって税率が変わってきますので注意が必要です。
不動産の売却時にかかる税率は5年以下の短期譲渡所得と5年を超える長期譲渡所得に分かれています。
短期譲渡所得税は39.63パーセント、長期譲渡所得税は20.315パーセントとなっており、約2倍の差があります。そのため物件を取得して5年を超えた段階で、出口戦略を考える一つのターニングポイントとなってくるでしょう。
まとめ
以上、今回は不動産投資の出口戦略について、具体的な事例を交えていきながら解説してきました。
不動産投資を順調に運営しているつもりでも、出口戦略に失敗してしまうと元も子もありません。
不動産投資から得られる利益を確実なものとするために、常に出口戦略を意識した不動産経営を心掛けていきましょう。
また、柔軟な出口戦略を考えておく事で、不動産投資の戦略の幅も広くなってきます。保有物件の手離れを良くするために、適切な管理運営や営業努力を怠らないように気を付けておきましょう。